3 福井県の地域医療構想策定に当たって(5問)
◯大森委員 次に、福井県の地域医療構想策定について、伺う。 先月15日、国は2025年の時点で望ましい病院のベッド数、必要病床数に関する報告書を発表した。2025年は、団塊の世代が75歳になる年であり、医療や介護事業が最大化すると言われている。これを見越して国は、ベッドが過剰だと不必要な入院や長期療養がふえ、医療費がかさみやすい傾向にあるとして、病床の地域格差を是正し、年間約40兆円を上回る医療費の抑制を図ろうとしている。報告書は最も低い推計でも病床が過剰になり、本県を含む41道府県に削減を求めるものであり、全国で約1割、約15万床を削減できるとしている。医療や介護を必要とする高齢者が多くなるにもかかわらず、ベッド数を減らせというのは疑問を持たざるを得ない。本県の必要病床数は1万300床から7,600床になり、2,700床削減できるとされているが、なぜこういう数字を推計されたのかを伺う。
◯健康福祉部長 2013年の数字でいうと、本県の病床数は、今、指摘のとおり1万300床であり、実際に入院されている患者数では約8,500人である。今回の国の試算では2025年の本県の必要病床数7,600床と推計されているわけであるが、これは投薬のみの患 者の方、また、経過観察中の患者など、医療の必要性が比較的少ない患者の方については、在宅や介護施設での対応が可能ではないかといったような論理のもと で、それに応じた病床数ということで算出されていると聞いている。
◯大森委員 この推計結果は、今年度県が策定する地域医療構想に反映されることになるとのことであるが、病床の削減 は、医療機関に与える影響が大きいだけでなく、特に共稼ぎ家庭が多く、残念ながら三世代同居もそうままならない状況の中で県民の不安につながるおそれがあ る。地域医療構想において、病床の削減の計画を立てるに当たっては、県民や医療機関の理解を十分に得る必要があると思う。
野田委員の一般質問に おいて、構想の策定に当たっては、医療審議会や二次医療圏ごとの会議を開催し、丁寧に議論を進め、県民や県議会の意見を踏まえ、今年度中に策定する予定で あるとの答弁があった。医療審議会や医療圏ごとの会議のメンバーとなっている医師会の代表等からの意見聴取に加え、現場に近い医療従事者からの意見も聞 き、地域医療構想のたたき台をつくる段階からかかわってもらうべきと考えるが、所見を伺う。
◯健康福祉部長 地域医療構想の策定に当たっては、地域の実情を反映して、構想を円滑に進めていくため、より多くの関係者の方の意見を取り入れたいと考えている。具体的には、二次医療圏ごとに設ける会議において、地元の医療機関に加えて実際に在宅医療や介護に携わっている方々にもメンバーとして加わってもらう予定をしている。
◯大森委員 病床数を減らすには、患者の受け皿が必要であり、介護施設や在宅医療の強化が必要になるが、県では4月に医師会が在宅医療サポートセンターによる訪問医療医の育成を始めている。また、報道によれば、厚生労働省は、昨年4月をめどに医師が高齢者等の自宅を定期的に訪れ診察する訪問診察診療の専門診療所を認める方針を示した。医療費削減のため病床数を減らし、在宅医療を進めざるを得ないのはわからなくもないわけであるが、在宅療養が本当によいのか。人口減少や高齢化により自助、共助、公助の力が低下していく中、在宅医療は本人や家族にとってつらいことではないかと思う。自助については三世代同居率が低下し、高齢者夫婦のみの家庭がふえる中、家族による介護は本当に期待できるのだろうか。共助については地域力が低下し、地域の助け合いがますます難しくなっていくのではないか。公助については生産人口が減っていく中、訪問診察を行う医師や訪問看護を行う看護師など在宅医療に関わる人材を確保できるのか、また、自治体の厳しい財政事情の中、在宅医療や介護に関わる予算を確保できるのかなど課題が多いと思う。さまざまな課題がある中、地域医療構想の目標年となる2025年の本県の医療介護を考えると、今から地域においての受け皿となる在宅医療や介護施設の整備の充実が不可欠であると考える。県は今後、在宅医療、介護の充実に向けどのように取り組んでいくのか伺う。
◯健康福祉部長 県においては、坂井地区で実施している在宅ケアモデルの全県展開を図るために、全市町にコーディネーターを配置している。医療介護関係者が合同で事例研修などを行って、チームでの技術向上に努めている。今年度からは、在宅医療サポートセンターでの在宅医師、歯科医師の養成や広域連携が必要な入退院のルールづくりなどを進めており、平成29年度までには全ての市町において、まず医療介護のチームが患者情報を共有した治療体制を構築する、また、もう一つは、緊急時の受け入れを行う病院との連携体制を構築することで、24時間切れ目なく在宅医療を提供できる体制を構築していきたいと考えている。また、小規模多機能型の居宅介護、また、複合型サービス、24時間対応型の訪問介護看護などの在宅系の介護サービスの充実を図る必要がある。また、一方では、ひとり暮らしで重度の方など、在宅での看護が困難な方については、在宅とのバランスを考慮しながら、介護施設についても計画的に整備をしていきたいと考えている。
◯大森委員 私も父親と母親をここ数年の間に送った。母親は、結構長く患い、在宅でも頑張ったが、最後半年間は病院で送った。私の周辺にもそのような事例は多くあるし、私も61歳になったが、我々の世代はあと15年後には後期高齢者になる。それは2025年より後であるが、我々の次の世代が、今は25%しか戻ってこないが、そのときには15%しか戻ってこないという。夫婦だけの世帯がますますふえてくる中で大変問題がある。今の言葉のようにすべて解決できればいいが、現実問題としては大変な状況にあると思うので、ぜひとも今後の対策を真剣に考えていっていただきたい。 次に、地域医療構想に関連して、県立病院について伺う。 県立病院は、本県の基幹病院として重要な役割を果たしてきている。医療関係者から話を聞くと、病床の利用率が下がってきているという。一般病床で約78%であり、病床が有効に活用されていないように思う。私は民間ができるところは民間に任せて、公立病院は余裕がある病床は削っていくべきではないかと思うわけであるが、福井県立病院の近年の病床利用の推移及び低下している理由等について伺う。
◯健康福祉部長 県立病院の精神病床を除く病床利用率については、平成23年度では84.7%、これが今、指摘のように平成26年度は78.3%ということで、低下傾向にある。これは、疾病ごとに標準的な入院期間が定められているために、短期間に集中して医療行為を行っていること、また、内視鏡やカテーテルなどを用いた患者の体に負担の少ない手術方法を取り入れているといったようなことで、できるだけ短期間に退院をしていただくための取り組みを進めていった結果、平均在院日数がここ数年短くなっていることが原因だと思っている。なお、病床利用率は低下傾向であるが、新たな入院患者数は毎年増加をしているし、入院収益は平成23年度から26年度にかけては約5%増加している。
◯大森委員 今、病床数を減らすということで考えれば、それが可能であるということではないかと思うわけであるが、その辺も含めて検討いただきたいと思う。 地域医療構想策定に合わせて、県立病院の中期経営計画を策定することであるが、先ほど話したように、努力をすれば病床は余ってくるということも事実であるので、中期的な視野で県立病院の果たすべき役割や機能、適正規模について十分に検討してほしいと思う。これは要望である。 地域医療構想の策定に当たっては、県内だけの需要を考えていると思うが、先月、日本創成会議は、都市部の高齢者を地方が受け入れ、地方創生に生かしていく戦略を立てるべきであるという提言をした。これが日本版CCRCという構想だと思うが、CCRCというのは、コンティニュー・ケア・リタイアメント・コミュニティということらしいのであるが、今、アメリカではこのような構想で、都市部の移動をさせているということである。 今、人口減少を考えたとき、福井県は何で食べていくのか。富山県は先ほども触れたように企業誘致、石川県の中心は観光、もちろん福井県も企業誘致や観光にも力を入れなければいけないと思うが、福井県のメーンは何かといえば、幸福度日本一、暮らしやすさ、子育て、教育、高齢者も本当に元気で長生きすることではないか。さて、国では日本版CCRCの導入が検討されており、来年度、新型交付金を創設するとの報道もある。CCRCとは高齢者が移り住み、健康なときから介護医療が必要となる時期まで継続的なケアや生活支援サービスを受けながら、生涯学習や社会活動などに参加するコミュニティのことである。発祥地のアメリカでは約2,000カ所あり、居住者は約70万人おり、約3兆円の市場規模とのことである。日本版CCRCは地方創生の取り組みの一つとして、東京圏を初めとする、高齢者がみずからの希望に応じて地方に移り住み、地域社会において健康でアクティブな生活を送るとともに、医療介護が必要なときには継続的なケアを受けることができるような地域づくりを示すものであるということである。福井県においても、ふくい創生人口減少対策の策定に当たって、日本版CCRCによる高齢者の地方移住について検討されている。国内の先進事例としては、ことし4月、安倍総理が見学したシェア金沢などがある。このような日本版CCRCの仕組みについて、どのように考えているのか伺う。
◯ふるさと県民局長 CCRCについてであるが、高齢者の地方移住については、人口の東京一極集中をどのように是正するかというまず大きな構図の中で考えるべき課題かと思っている。高齢者はもとより、若者や女性なども含めた総合的な人の移住、地方への人の流れを促す仕組みというものが重要であり、医療や介護施設の過不足だけを捉えて機械的に進めていくようなものではないということである。また、委員の指摘もあったが、いわゆる高齢者と言っても、実態はアクティブシニアとして働き続ける方、それから、社会貢献層としての活動を行う方など多様であり、そういうことを含めて具体的に考えていく必要があると思う。このような事情であるが、全体としてはこのような動きをフォローしていくことは大切であると思っており、地方における高齢者の受け入れと活用、増加する地方負担への対応、それから、何よりも高齢者自身の希望といった課題があるので、これらの条件整備というものがまず必要になるのかと思っている。
◯大森委員 この話だけ聞くと、高齢者だけを移動させるという意味合いにとれることもないのであるが、シェア金沢をネットで調べても実は全くそのような概念ではないのである。新たな雇用を生み、新たなコミュニティをつくっていくということで、高齢者を受け入れて、地域の財政負担がふえるというような概念では決してない。新たな雇用も生み出すような仕組みで、キャリアを持った人それからスキルを持った人など優秀な人をそこに集めてくることができるのかということは地域の力だと思う。今、高知大学や新潟県の南魚沼市など各地で研究をされている。福井版CCRCというのをしっかりと考え、そして、医療、介護を福井で受けたいと世界から人が集まるようなメディカルツーリズムを受け入れることで、また我々も高度な医療が受けられるような体制が残るということになると思うので、ぜひとも前向きに検討してほしいと思うが、知事の見解を伺う。
◯知 事 この問題は、先ほどお答えしたように、全体性を持って考えなければいけない。せっかくの提案であるので、今、一緒に検討している人口問題の中でどんな方向が出せるか、位置づけをしていきたいと思う。
◯大森委員 ありがとう。ぜひともよろしくお願いする。